外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・44
胃全摘で剣状突起切除は必要か
白石 憲男
1
Norio SHIRAISHI
1
1大分大学医学部第1外科
pp.1078-1079
発行日 2007年8月20日
Published Date 2007/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101795
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はじめに
2003年に学会雑誌であるGastric Cancerに掲載された論文「Xiphoidectomy」1)を読んで少し驚きを覚えたことを思い出す.これは米国のワシントン癌センターのVazquezら1)の報告であり,剣状突起切除の手技の工夫に関するものであった.論文を読んで,つぎのようないくつかの疑問が浮かんできた.「剣状突起切除は手技の工夫を必要とするほど危険なものなのか」,「胃切除術の際にいつも行なうべき有用な手技なのか」.実際,筆者の施設では胃切除術の際に剣状突起切除を行うことは稀であり,術野確保が不十分な際に仕方なく行っている.
様々な外科的処置は外科侵襲をもたらし,合併症を生ずる危険がある.それゆえ,剣状突起切除の目的は術野確保であるが,剣状突起切除をしなくても胃切除が可能ならば,施行しないほうがよいだろうと思う.逆に,剣状突起切除を施行しても合併症の発生率がきわめて低く,重篤な合併症もなく,胃切除が安全に施行できるのであれば剣状突起切除を推奨することができる.そこで早速,論文を検索してみることとした.しかし残念ながら,剣状突起切除に関する論文はわずか数編しかない.無論,無作為化比較試験などあるはずもない.
本稿では数少ない論文と筆者の経験から「胃全摘で剣状突起切除は必要か」ということを考えてみたい.
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