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アメリカのAbsolonは,Billrothに関して多くの著書を著しているが(事実,筆者も彼の文献を参考にした),1968年「Review of Surgery]誌に「Resection of the Cancerous Pyrolus Performed by Professor Billroth」と題した論文を寄せている(この論文はAbsolonがミネソタ大学外科のWangensteen教授の退官に際して行った口演をまとめたものである.Wangensteen自身も「Theodor Billroth and his unique school of surgery;図1」という論文をものにしている).これはBillrothが最初に行った胃癌切除手術の詳細を弟子のWölflerが報告したものの英訳である.ここに2,3,4例目の胃切除症例の臨床経過が掲げられているので,以下にその概略を紹介する.
2例目(図2)は2月28日に行われ,患者は39歳の女性であった.胃癌が疑われたが,確診に至らなかったため試験開腹し,幽門部に生じた髄様癌を確認し,2時間45分かけて切除している.しかし,術前の胃内腔洗浄が不十分であったこともあり,術後も胆汁を混じた嘔吐が続き患者の衰弱が進行するため,術後6日目に再開腹した.この際,残胃が高度に拡張していたため,胃壁を腹壁に固定した後に十二指腸に栄養チューブを挿入・留置するにとどめ,1時間ほどで手術を終えている.しかし,術前から栄養状態が悪く,衰弱も高度であったことから,術後経過は思わしくなく患者は再手術から30時間後に死亡した.剖検により,癌切除は完璧であったことが確認されたが,この症例においてBillrothは,いわゆる「oralis superior」で残胃十二指腸吻合を行っており,このため残胃の大彎側が嚢状に拡張(Billrothはこれを「diverticular pouch」とよんでいる)して通過障害をきたしていたことも判明した.以後,Billrothはこういう状況に陥ることを避けるため,残胃と十二指腸の吻合様式を「oralis inferior」に改めた.
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