外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・40
陥入爪に抜爪は必要か
大島 秀男
1
,
池井 聡
2
Hideo OSHIMA
1
1国立病院機構熊本医療センター形成外科
2国立病院機構熊本医療センター外科
pp.517-519
発行日 2007年4月20日
Published Date 2007/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101208
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
陥入爪は日常臨床でしばしば遭遇する有痛性の爪疾患であり,小さな病変にもかかわらず患者を苦しめている疾患の1つである.簡単な爪甲縁の処置や消炎処置によって症状が寛解することもあるが,容易に感染をくり返し,疼痛のため患者自身が根治術を希望することも多い.陥入爪患者の受診する診療科は外科,整形外科,形成外科,皮膚科など多岐にわたっており,治療方法も医師の判断や技量によって異なってくる.また,爪甲の変形が強度で爪床を巻き込んでいる彎曲爪は適切な治療がされずに放置されていることも多い1).
陥入爪は爪甲先端や側縁が周囲の軟部組織に食い込み,疼痛,圧痛,腫脹など局所の炎症をきたした状態であり,ときに感染して膿瘍,肉芽を形成することがある.母趾に好発するが,ほかの足趾,手指に発症することもある.陥入爪は先天性または後天性爪甲変形,不適切な爪切り・抜爪,白癬菌などの感染症,不適合な靴の着用などが原因で発症する.いったん爪甲が爪溝・爪縁郭にめりこんで外傷が生じると,炎症によって爪縁郭は腫脹し,爪甲のめりこみがさらに強くなって症状は悪化する.したがって,陥入爪の予防にはいわゆる深爪を止めて適切な爪切りによって爪棘をつくらないようにすることと,履物はつま先に余裕にあるものをはくようにし,足趾を圧迫しないように注意することが求められる.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.