Japanese
English
総説
ユビキチン・プロテアソーム系と神経変性疾患
The Ubiquitir-Proteasome System and Neurodegenerative Disease
田中 啓二
1
Keiji Tanaka
1
1東京都医学研究機構・東京都臨床医学総合研究所・分子腫瘍学研究部門
1Department of Molecular Oncology, The Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science
キーワード:
ubiquitin
,
proteasome
,
neurodegeneration
,
Parkinson's disease
Keyword:
ubiquitin
,
proteasome
,
neurodegeneration
,
Parkinson's disease
pp.935-942
発行日 2001年10月1日
Published Date 2001/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901845
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はじめに
細胞内に存在する全ての蛋白質は合成と分解のバランスで存在量が規定され,その動態は細胞機能に密接に関係している。近年,これまでの生命科学研究で主流を占めてきた遺伝子発現から蛋白質合成に至るセントラルドグマ研究の意義とは別に,蛋白質分解の生理学的な重要性が注目されている。その蛋白質分解を担うのがユビキチン・プロテアソーム系であり,この分解システムは短寿命蛋白質の調節的分解による生体制御と異常蛋白質の選択的分解による生体防御の役割を担っている。ごく最近,後者の役割の破綻,すなわち,基質蛋白質の異常性の獲得あるいはユビキチン・プロテアソーム系の機能障害が,様々な神経変性疾患の発症原因となることが明確になってきつつある。言い換えると,神経変性疾患を細胞内蛋白質分解系の不全という視点から覗くことによって,その真相に迫ることができるかも知れないという機運が高まっているのである1)。
細胞が健康であることは生命の維持・存続に必須であり,神経細胞の健全性の破綻が重篤な神経病の発症に関係する。というのは,ニューロン以外の細胞では,健全性の継続的な維持が困難になった場合「自死」のスイッチを作動させて死滅した後,細胞増殖装置を稼働させて喪失した細胞を新しい健康な細胞に置換すればよいのであるが,神経細胞ではこの再生戦略はとれない。
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