細菌性中枢神経感染症の発症に関与する生体側因子—遺伝的背景を中心に

Genetic Factors Involved in the Development of Bacterial CNS Infections

I．一般（細胞外）細菌による中枢神経感染症

1．発症病態と宿主防御機構（表1）

　細菌はまず鼻咽頭粘膜へpiliあるいはadhesinsを介して1）mucosal attachment，colonizationをする。その際，細菌は分泌型IgAによる中和，繊毛運動による排除から逃れる必要がある。次に2）invasionはendocytosisや細胞間隙を通って行われ，3）intravascu-lar survivalでは食細胞，補体からの攻撃あるいは脾臓における貪食を逃れ，4）crossing of blood brain bar-rier（BBB）を経て髄膜に到達する。その際，多糖体莢膜が好中球からの貪食や補体の殺菌作用を抑制する。5）survival within CSF：髄液中の食細胞，抗体，補体から逃れ細菌が生存する^10,11）。これらの機序を経てはじめて細菌性髄膜炎が発症する。このように発症の際，抗体，補体，食細胞，脾臓が大きく細菌排除に関与する^2）。