胸部圧迫と頭部外傷後に硝子体出血を来した1乳児例

Vitreous Hemorrhage after Accidental Head Injury with Chest Compression:Case Report

　胸部圧迫頭部外傷後に硝子体出血を来した1症例を報告した。くも膜下出血に続発する硝子体出血（Terson症候群）は良く知られている。頭部外傷後にも硝子体出血を来すがくも膜下出血後に比し少ない。症例は意識障害を主訴とする4カ月の女児である。1993年2月6日に，患児を抱いて立っていた父親が敷居につまずき，抱いたまま患児の上に転倒した。その際，患児は頭部を打撲すると同時に胸部を父親と畳の間に強く圧迫された。直後から眼つきと顔色が不良となり当院へ搬入となった。入院時，両側の硝子体出血が観察され，CT scanでは急性硬膜下出血がみられ，大泉門圧は330mmH₂0と高値を示した。経過CT scanでは橋静脈の破裂に起因する脳梗塞と出血性梗塞がみられ，頭部に回旋や角加速度的な作用が及んでいたと推測された。その作用と急性頭蓋内圧亢進，さらに胸部圧迫という網膜出血の発症要因が同時に重なったために，網膜出血量が多くなり硝子体に波及したと考えられた。

Vitreous hemorrhage is relatively common fol-lowing subarachnoid hemorrhage, but rarely occurs after accidental head injury.

In this paper, we report a rare case of vitreous hemorrhage after an accidental head injury with chest compression.