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I.はじめに
誘発磁界は17年前に視覚刺激(Brennerら1),Teylerら2)),次いで体性感覚刺激(Brennerら3)),聴覚刺激(Reiteら4))を用いて初めて記録されて以来,脳磁図の分野での中心課題として最も精力的に研究されてきた。その第1の理由は,初期の頃のSQUID磁束計のチャネル数の不足が挙げられる。脳磁図を同時記録できる領域が限られていたため,てんかんなどの自発性脳磁界よりも再現性が期待できる誘発磁界が対象として好まれた。記録部位を移動することで広範囲にわたってデータを収集し,同一の潜時において補間演算から等磁界線図(contourmap)を作成し,磁界の極大,極小の位置と間隔を推定して電流源の局在推定などの解析が行われてきた。第2の理由として,初期のRF-SQUID磁束計の感度があまり高くなかったため,加算平均をとることでS/N(信号対雑音)比を高められるパラダイムが好んで用いられたとも考えられる。ただし,磁束計のチャネル数が少なく頭皮上をカバーできる領域が狭いため,データ収集や解析に膨大な時間がかかり日常の臨床検査として用いるには困難な点が多かった。最近37チャネルの生体磁気計測システムが複数のメーカから開発され,記録時間,解析時間を大幅に短縮するものと期待されている。
一方,脳脊髄誘発電位は日常の診療で頻繁に用いられる臨床検査となってきており,伝導速度の評価や障害部位の推定が行われている。誘発磁界は特に大脳誘発電位の所見を補強し,さらに体性感覚野や聴覚野,言語野,視覚野などの3次元的な局在を,非侵襲的に求める能力を具えた新しい検査法として期待されており,本格的な多チャネルシステムの登場を迎えて,近年臨床応用の面で広く注目されてきている。誘発磁界については前述のとおり,各種刺激方法にわたって詳細な研究が論文などで発表されており,総説もいくつか存在するので,ここでは誘発磁界の検査一般について基礎的な事項を踏まえながら,その特徴について簡単に解説することにする。
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