書評
—編集 高久 史麿(東京大学教授) 尾形 悦郎(東京大学教授) 出月 康夫(東京大学教授) 柏木平八郎(東京大学教授) 25氏分担執筆—NEW INTEGRATED MEDICAL LECTURES 臨床治療学 ペイシェント・マネージメント
酒井 紀恵
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1筑波大学附属病院内科
pp.566
発行日 1989年6月1日
Published Date 1989/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206329
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今回NIM Lecturesシリーズの『臨床治療学一ペイシェント・マネージメント』が出版されたことを大変うれしく思います。非常に実用的で使いやすいからです。本のうえでは病気について学んできたわけですが,医師になって半年,実際に患者さんに接する時には様々な心理・社会的背景が病気を修飾しているということを感じる毎日です。そのようなレジデントの立場から本書の読後感を記してみたいと思います。
Lectures 2「記録と計画」ではpsychological problemやsocio-economic problemの見落としの防止についてわかりやすく記載されています。またLectures 4の「知っておくべき基本療法」の中の"処方せんの書き方"では,ノンコンプライアンスの問題に注意を喚起していて,治療の反省を促しています。Lectures 7以降の「ベッドサイドの主な問題とその解決法」は10のLecturesから成っています。たとえば,「心不全」の項を開いてみると,"最初に判断すること"として, ・今すぐ治療を必要としているか ・本当に心不全か ・心不全の原因は何か ・心不全を増悪させているものは ないかという項目が並んでいます。苦しそうな患者さんをみて,私のような経験の乏しい医師が頭の中では知っているはずなのに,どう動いていいのか戸惑うのは,まず何を確認していいのか分からないためなのだと思います。とりあえず酸素を投与して,次に何をすればよいのかを指示してくれる本書は,船を安全な陸地まで導くのが医師だとすれば,目的地まで連れていってくれる地図にもたとえられるでしょう。
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