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SwaimanおよびWright両教授の編集による本書「The Practiceof Pediatric Neurology」は,素晴らしい本である。昭和30年代後半から同40年代にかけて,新しい分野として急速に発展した小児神経学領域は,間もなく青年期に達しようとしている。それを反映して,小児神経学専門の教科書あるいは参考書も,今では決して少なくなくなったが,その数ある類書の中で,先ず最高・最良・最新の書と推奨してよいと思う。
本書は,1975年の初版発行当初から,すでに大変な好評を博したもので,今回は全面改訂された第2版である。私事になって恐縮であるが,私は1982年10月初旬ミネソタ大学病院にSwaiman教授を訪問した。丁度その時本書が発行された直後で,彼はオフィスに届いた新版を手に,本書の執筆・編集の実状を種々話してくれた。その一部を紹介すると,初版自身が全米で大変な反響を呼んだこと,アメリカ小児神経学教授全員(現在100名に近い)に献本して内容に関する批評・意見を求めたこと,第2版の早期発行を要望する声が読者・出版社から早くから出ていたが,改訂作業を徹底的に行なったために,第2版の発行が予定よりおくれたこと,などなど。どの位原稿執筆に慎重を期したかというと,一つの症状の記載,鑑別診断の進め方,新しい診断技術の価値と限界,治療方式の実際(たとえばギランバレー症候群に対するステロイドホルモン投与の位置づけや投与量・期間など)など,あらゆる節や章を一つ一つ徹底的に吟味した。施設によりあるいは分担執筆者により意見の異なる問題は,頻回に意見を交換して,最善と思われるものを引き出した。そのために分担執筆者(本書は2編者を含め49人の分担執筆陣から成る)に,何回でも書き直しを求め,必要な場合は,さらにSwai—man教授自身が不十分と思われる部分を書き加えるなどして完璧を期した。このようにして,多人数の分担執筆書にありがちな記述の重複,矛盾,比重アンバランスなどの調整に努めたとのことであっだ,彼は最後に,出版社へ送った最終原稿を見せてくれたのだが,ワープロで打った原稿が約10cm位の厚さごとに数十冊かに仮製本され,延べ10メートルになろうという倉庫の棚を充満しているのを見て,私はアッケにとられた次第である。
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