書評
—石井 毅 編集—神経病理学
平山 恵造
1
1千葉大学神経内科
pp.40
発行日 1983年1月1日
Published Date 1983/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205054
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編者の「まえがき」にもあるように,わが国には神経病理学の各論を取り扱つた参考書は非常に少ない。外国の専門の大著をひもとくのもそれなりの意義はあるが,日本語の,常に手元に置かれた手頃な書物があることは,この領域の学問全体のレベルアップのためには是非必要なことである。これは神経病理学を専攻する人々のためのみならず,臨床神経学にたずさわる神経内科医にとつても同じで,そのような参考書は是非必要なところであつた。そのような観点からしても,本書が今般刊行されたことは意義深いものであり,またその目的にかなつた書であることを先ず第一に指摘しておきたい。
本書ははじめの2章が神経病理学総論に当てられている。脳の切り出しから各種染色法,病的所見に至るまでが簡潔に記述されている。各論を読む上で,その基盤である総論がそれなりに述べられていることは大切であるとともに,親切でもある。ただ初心者に少しわかり難いであろうと思われることは,それぞれの染色で何が染まるのか,各種病的所見はどの染色でみられるのか,またその光顕像は具体的にはどうなのか,あるいは神経細胞,突起の正常電顕像はどうなつているのか,というようなところがつまびらかでないことであろう。しかし,大凡のところで総論は成功をおさめているということができる。
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