Japanese
English
特集 過酸化物
脂質過酸化と脳血管攣縮
Lipid peroxidation and cerebral vasospasm.
浅野 孝雄
1
,
佐々木 富男
1
,
佐野 圭司
1
Takao Asano
1
,
Tomio Sasaki
1
,
Keiji Sano
1
1東京大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery,Faculty of Medicine,University of Tokyo
pp.33-46
発行日 1981年1月1日
Published Date 1981/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204698
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はじめに—晩期攣縮とオキシヘモグロビン
脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血(SAH)後に生じる脳動脈攣縮(Vasospasm:VS)について多くの研究がなされたが,その本態は依然として謎に包まれている。本論文の目的は,VSと過酸化脂質とのかかわりについて,我々が過去に行なつた幾つかの研究結果に立脚し,さらに関連諸領域での最近の知見をとり入れて,この分野において設定され得る問題を整理しまた将来の可能性を探ることにある。最初に,VSに関して過去になされた厖大な研究の流れの内で,本研究がどのように位置づけられるかを明らかにする必要があろう。
VSはSAH後に発生する局所的若しくは広汎な脳動脈内腔の狭窄であり,その発生は神経症状さらには脳梗塞の発現と密な相関を有する86,110)。VSがSAH発症後,数日(3〜7日)の潜伏期を経てはじめて発現することは,最近になつて明らかにされた55,86,110)。初期の動物実験では大槽からのクモ膜下腔への血液注入により,直ちに発生する早期攣縮と,それが一旦緩解した後に再び発現し長時間持続する晩期攣縮とが認められている20)。早期攣縮の発生は,血液中の何らかの血管平滑筋収縮作用を有する物質の作用によると考えられるため,このような物質の同定を目的として主としてin vitroでの多くの実験が行なわれた49,83)。
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