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脳室系の出口である第4脳室のMagendie孔とLuschka孔の閉塞occlusion,あるいは閉鎖atresiaによる水頭症が,Dandy(米,1921)とTaggart and Walker(米,1942)により報告されていたが,Benda(米,1954)はこれらが単なる閉塞,閉鎖ではなく,このレベルの発育(発生)障害によるものであることを明らかにし,これにDandy-Walker症候群と命名することを提唱した。爾来この名がある。発生学的に神経管が閉鎖する時期に,第4脳室・小脳レベルでの形成障害により起こる異常で,Arnold-Chiari症候群などと共に縫合異常dysraphismに属する。この発生障害の結果,第4脳室は嚢胞cyst状に大きく拡大し,Ma—gendie孔,Luschka孔は膜で被われ,脳脊髄液は出口をふさがれて,それより上位の脳室系には髄液が貯溜して,内水頭症を来たす。この?胞のためか,あるいは発生不全のためか,小脳虫部および脈絡叢は痕跡的に存するのみで,小脳半球は後方で左右に2分された形になつている。これはまた全体として後頭蓋窩を占め膨大し,頭蓋後部(後頭下部)を外方に膨隆せしめて,頭蓋は前後に長くなり長頭症dolichocephaliaを呈するに到る。
本症候群は先天性の脳の発生不全によるものであり,従つてその臨床症状も多くは小児期のはじめ(2才前)に気づかれるが,小児期後半や稀に成人になつて現われることもあるとされている。患児の四肢運動機能の発達のおくれ,水頭症による頭蓋縫合,特に人字縫合の離開,ならびに長頭症,頭蓋内圧亢進症状,眼振などがみられ,時に小脳症状,脳神経症状を呈するといわれる。単純レントゲン写真では後頭骨はうすく,後頭蓋窩は拡大し,人字縫合の離開,外後頭隆起の高位がみられる。後頭蓋の嚢胞部は懐中電灯の光線を透過せしめることもある。内水頭症は非交通性を原則とし,脳室撮影でそれを確認することができるが,時に,孔が小さく開いている場合や,自然に破れて交通していることもあるという。
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