書評
—Hermann Schmidt 著 隣谷 義人 訳—X線断層像解剖アトラス
高橋 睦正
1
1九州大学医学部
pp.1459
発行日 1971年11月1日
Published Date 1971/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203022
- 有料閲覧
- 文献概要
断層撮影法の基本的なX線解剖の解説書が要望されていた矢先,今度,このような訳書が発刊されたことは,断層撮影法が広く放射線診療にとり入れられてきつつある今日,誠に喜ばしいことである。本書の特徴は,まずある身体断面における解剖断面図を示し,ついでその面でのレントゲン断層写真を示している。従って,各臓器,組織の仕置関係を立体的に把握した上で,X線断層フイルムを読影していくので,初心者にとって,はなはだ理解しやすい。さらに,本書は,実際に診断に用いている特殊検査法,例えば,気脳造影,血管造影,気体後腹膜造影などの断層撮影を駆使し,各臓器,組織の立体的関係をよりよく理解できるように工夫しているので,本書を通読すれば,断層撮影の読影のみならず,単純撮影の読影力をも向上させ,X線フイルムのより知的な読影が可能であると考えられる。また,身体解剖図と断層写真を対比することによって日常診療で問題となる位置ぎめのためにも有益な参考書となるであろう。
本書は放射線診断の初心者のために書かれた名著であるが,将来の改訂にあたっては更に詳しい解説と写真を加えて,各領域の専門家にも有益な本となるように望みたい。例えば,頭部の項においては,気脳造影で造影される解剖学的構造をすべて図示するとか,錐体部の断層像をもつと多く出すなどである。このように項目を細分することによって,軟部組織から骨にいたるすべての臓器,組織を一枚の断層写真に示す努力も不必要となり,さらに鮮明な写真のアトラスが出来上るであろう。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.