書評
手の構造 Structures of the Hand
水関 隆也
1
1広島県総合リハビリテーションセンター
pp.1451
発行日 2024年12月25日
Published Date 2024/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408203175
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「何だこの本は?」誰もがこの本を手に取ると感じるに違いない第一印象.本書の帯に「医学か,芸術か.」とある.興味津々,本書を開いてみると,1ページ目から人の手の皮膚を剥いだモノクロ写真が飛び込んでくる.手外科を生業にしているわれわれには見慣れた画像ではあるが,機能的に配置された手指の構築物をあらためて俯瞰すると,それは確かに芸術作品にも見えてくる.
解剖経験者であれば容易に想像できるが,一見簡単そうに見える解剖写真の見栄えを整えることはそう簡単ではない.著者が序章で書いているようにホルマリン防腐処理を受けた屍体は変質して,とても観賞に耐える写真はつくりえない.冷凍屍体は時間とともに乾燥して新鮮さを失う.実際の手術時の所見に近づけるため,著者は繰り返し水に浸し標本の湿気を維持している.この段階ですでに標本作成の苦労は想像に難くない.仮に標本の保存がうまく行われたとしても,解剖を進める際に組織を間違って切りつけたり,切除したりして思うような標本ができないと最初から解剖をやり直すはめになる.標本が完成したら次なる課題は写真撮影である.本書には,写真家としても知られる著者であればこそ撮影できる写真が随所に見られる.素晴らしいクオリティの写真である.
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