Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
第1例は重症頭部損傷の青年で,不応性の肺浮腫・つよいチアノーゼ・両側pneumonitisとなり,第2,3日依然昏睡,肺X-P清明,第4日呼吸促迫,さらにチアノーゼ,X-Pは肺浮腫の所見。気管切開,IPPB,第5日死亡,左心不全はなかつた。剖検できなかつたが肺浮腫死では納得できず,文献を徴しても,これに合う適切な報告を見ない。そうしているうちに,第2,3例で剖検できた。第2例16歳少女,自動車事故で頭部閉鎖損傷,骨盤・左上腕・左大腿骨折,第5日に肺門周辺pneumo—nitis所見あらわれ,チアノーゼ・呼吸促迫・頻脈・気管分泌物増加あり,気管切開,ECGにST, Tに虚血の所見。IPPBその他強力治療を行なつたが,第8日死亡。剖検で強度のconfluent bronchopneumoniaで肺胞内出血つよい。胸部外傷の所見はない。第3例22歳青年,打撲による頭部損傷,2時間後気道狭窄症状あり気管切開,減圧のための開頭術。X-P,右下葉に小肺炎巣をみるのみ。ECGにはST, Tに左室strain像あるも虚血像なし。第2日右中・下葉consolidation,チアノーゼ,しかし肺浮腫所見なし。呼吸促迫・チアノーゼつよく第4日死亡。剖検,両側bronchopneumonia,肺胞内出血,滲出。心筋異常なし。つまり重傷頭部損傷3例,胸部損傷・ショック・過剰輸血なしに,気管切開・IPPBその他の手をつくしたるにもかかわらず,down-hlllコースで両側出血性肺炎で死亡したことになつた。そこでこういつた肺炎の発生する機序を,文献から考察するに,ヒトではConnor (私信)が92頭部外傷で21.7%に心筋に虚血性変化あり,その平均生存4.7日,propanoのごときβ—blockerが有効であろうとしている。Hunter (Lancet2:279,1964)が頭部・胸部合併損傷に本報に類する所見を得,Cushing反射によるとした。しかしfatal hemmo—rrhagic pneumonitisというのは,頭部外傷に合併するnew syndromeで,Keller (J. Thor. Card. Surg.53: 743, 1967)の主張した急性肺鬱血が原因と考えられる。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.