今月の主題 肺
総説
肺の損傷と修復—肺炎から肺線維症
泉 孝英
1
Takateru IZUMI
1
1京都大学結核胸部疾患研究所内科学第2教室
pp.147-153
発行日 1987年2月15日
Published Date 1987/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913251
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はじめに
第二次大戦後の40年間,わが国では特に最近20年間において,呼吸器病学は急激な変貌を遂げている.生活環境,栄養状態の改善,抗生物質の開発などによる結核をはじめとする細菌感染症の激減,人口の高齢化に伴う肺癌の増加,所得増加に比例した喫煙人口,喫煙量の増加による肺気腫症の増加,サルコイドーシス,特発性間質性肺炎(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)に代表される各種間質性肺疾患の出現,あるいはびまん性汎細気管支炎の出現などである.
"肺の損傷と修復"と言うレベルからみれば,もっとも関心の持たれる疾患は,肺気腫とIPFをはじめとする肺線維症である1).いずれも結合組織異常(connective tissue disorder)を主徴とする疾患であるが,肺気腫はエラスチン(elastin)の消失が,肺線維症においてはコラゲン(collagen)の異常増殖が基本病態である.しかし,エラスチンの消失,コラゲンの増殖からいきなり病変がスタートするわけではなく,炎症に引き続いて起こってくる病態である.本総説の主題とするところは,後者"炎症から線維化—炎症の修復過程としての線維化"であるが,第一に,ひろく肺線維症とはどのような疾患であるかについて述べる.
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