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外国雑誌へ投稿すると,その編集委員よりいろいろの意見や注文をつけられることが多い。論文の内容に関して,かなりはつきりした意見や批判を加えられる場合も少なくない。その意見がすべて妥当であるとは言いえないが,確実に言えることはそのような意見を述べられるためには,その論文を非常によく読まなければならないということである。編集者にはそれだけの責任が要求されるし,また著者のほうも編集者がそのような意見や批判をするのは僣越であるとは考えないのではなかろうか、ところが,日本の雑誌の編集をしていてわれわれが反省しなければならないことは,著者や著者の教室の主任に対する遠慮から,卒直な意見を控えがちになつたり,論文の価値に疑問を感じながら掲載を決定してしまうことがあることである。しかし,それではいつまでたつても雑誌の質は向上しないだろう。編集者が論文をよく吟味する習慣をつければ,それは自然著者にも反映し,しだいによい論文が集まるようになる。あの雑誌に採用されたのだから自分の論文の価値が認められたと著者が感ずるぐらいになれば,読者のほうもあの雑誌の論文ならば内容もよいものにちがいないと感ずるようになるはずである。そうすれば雑誌の質はみずから向上するはずである。編集者は編集会議をやつて特集記事のテーマや連載物の選定をすることを主要な任務と考えるのは誤りであると思う。出版者の側からすれば特集記事や連載物が読者を増加させると考えるかもしれないが,よい論文の掲載されている雑誌のほうがはるかに魅力がある。ようするに学術誌の編集者はよい論文を掲載することを第一主義と考えるべきであるということが私の考えであり,またみずから反省している点である。
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