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「非定型ないし特異型筋萎縮症」の特集を終つて
本誌の編集委員会で,内科方面の神経学関係で何か特集号をつくつてはどうかという意見がでたのは確か本年の春頃であつたと思う。特集ということはひとつの方面についてまとまつた知識を与えてくれる点では読者にとつてありがたいことではあるが,最近は特集号を中心とした雑誌がきわめて多いし,神経学方面でも本誌の姉妹誌「神経研究の進歩」は特集記事を中心に編集されておりここでさらに特集をやることに対し,私はいささか疑問を感じた。しかし強い要望もあり,日本の現在の臨床神経学の進歩に役だつような特集テーマがあればよいと考えたところ,思いついたのがこの特殊な筋萎縮症であつた。おそらくこのような疾患は古くから数多くあつたが,診断できないまま埋もれていたのではないかと思う。実際に古くからときおり報告されてきたが,この数年間急に報告例が増加した。これはこのような疾患に対する関心が増加したためと推定される。学会にはそのようにして報告され,非常に興味深く拝聴もするのであるが,論文として発表されるものが少なく,このため貴重な症例が埋もれてしまつているのが現状である。幸いに私は,神経学会の総会講演会や地方会,内科学会地方会などで興味を引いた症例のリストをつくつていたので早速それぞれの報告者にお願いすることにした。ただし,すでに論文として発表されたものは除いた。この特集は,他の多くの特集のように美しく整備された企画ではないので,御願いした原稿の全部が集まらなくてもよいと考えたのであるが,実際にはほとんどの方々が快諾され執筆され,さらには予定しなかつた論文さえいただけることになつた。
私は今,特集号のI,IIと,さらにIIIの校正刷を机上に並べ,心から喜びを感じている。私自身著者の一人であるので,このようなことを申すのは潜越であるが,各症例はいずれもが貴重であるし,研究内容のすぐれたものであることは御認めいただけることと思う。著者の方々には心から敬服し,お礼を申しあげたいと思う。
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