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医学雑誌のなかに,数年,ときには十年以上も刊行をつづけた後に廃刊になるものがある。これは,その雑誌に寄稿したり愛読したりしているものにはショックである。廃刊の理由は多くは採算上の問題らしい。もちろんそれが商業雑誌であれば,出版をつづけられなくなる出版社の立場は了解できる。しかし,このようなことを平気でくりかえす出版社があれば,その会社は医学者の信用を失い,よい論文はその社の雑誌を敬遠するようになるし,大局からみれば出版社の損失にもなろう。採算割れになるのは読者がはなれ,発行部数が減るのが原因であろうが,これは出版社よりも編集者に責任があるという見方もある。編集者は雑誌の売れゆきよりも学問的興味に従つて編集することが多いが,これはあながち編集者を責める理由にはならないと思う。なぜならば編集者の興味はそれと同じ立場の多くの読者の興味であるからである。だから,このような状態のために読者が減ることはあまりないように思う。もし編集者が責められるとすれば,編集の積極的熱意を失い,雑誌の質の低下にも無関心となつた場合であろう。ところが,質は低下していないが,誌価が高すぎて売れない場合がありうる。こんな場合は,編集者と雑誌社側とが十分に協議して対処せねばならないと思うのだが,編集会議に雑誌社側から出席するのは編集部員であり,営業部員ではないので,話が最後までゆかないのである。以前,私は特集記事を中心としているある雑誌の,各号の売行き状態を調査して,特集テーマの選定の参考にしようとしたが,営業部から満足のゆく返事をもらえなかつたことを経験している。出版社が,学者は営業のことなどわからないと考えるのは誤りだと思う。編集者が雑誌に愛情をもてば自然発行部数に無関心ではいられなくなるものである。私は雑誌の廃刊を防ぐためには,雑誌社と編集者が話し合い,あらゆる努力をする義務があると思う。
幸いにして本社は着実に発行部数も増加し,スクスクと成長している。以上のような心配をしないでよいことは,ご同慶のいたりである。
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