連載 神経病理アトラス・2
脳外傷の病理
向井 紀二
1
,
中村 紀夫
2
1東京大学医学部病理
2東京大学医学部脳神経外科
pp.372-379
発行日 1964年5月1日
Published Date 1964/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201632
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1963年におけるわが国の事故死はついに死因統計ランキング5位となり3万9千余,そのうち交通禍は実に1万2千余,頭部外傷を死因とするもの70%,8,600。東大脳神経外科を例にとつてみても患者数は4万人を突破し,世界第1の殺医的多忙に追われている。東京都監察医務院の解剖例から主都における頭部外傷をみると,34.2%が頭蓋内出血による脳実質圧迫,21.6%が挫傷と圧迫による傷害を致命傷としたものであつた。
傷害因子がきわめて雑多な外力で,しかも複雑な機能局在性,代謝系の組合せによつて今日いまだ十分に解明されていない脳組織に対する侵襲を微分するために、脳外科と神経病理学の緊密なアプローチが現代ほどつよくのぞまれる段階はないであろう。
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