連載 神経化学実験法・3
無細胞系の代謝研究法
植村 慶一
1
,
高垣 玄吉郎
2
Uemura Keiichi
1
,
Takagaki Genkichiro
2
1東邦大学医学部第2生理
2慶応義塾大学医学部生理
pp.346-351
発行日 1964年4月1日
Published Date 1964/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201626
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I.脳組織の細胞分画法
細胞の複雑な働きを解明する手段のひとつとして細胞を構成する各細胞成分を分離し,その化学的組成,その生化学的活性を研究し,細胞として総合された働きを再構成しようとする試みがある。神経細胞の細胞内成分にはシナプス,ミエリン鞘,ニッスル小体など特徴的な構造が存在するが,神経組織には神経細胞のほか,各種グリア細胞が混在するため,細胞内成分も不均一であることが予想され,純度のよい細胞内成分の分画を得ることはむずかしい。最近になつて,テフロン・ホモジェナイザー,超高速遠心装置,密度勾配遠心法など生化学の方法の進歩と,形態学的には電子顕微鏡の技術の発達により細胞内成分分画法もいちじるしい進歩をとげつつある。脳組織では特にE. de Robertisら5)およびV.P.Whit—takerら4)の神経末端分画の分離は脳組織における形態と機能の関係を生化学的につかむてがかりを与えるものとして興味深い。
脳組織の細胞分画法の実験技術的な問題を,1)一般的注意,2)細胞を破壊する方法,3)細胞内成分を分離する方法,4)各分画の純度を検定する方法,にわけて簡単にのべよう。
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