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眼窩・鼻・副鼻腔には結核・梅毒・真菌・リンパ腫などの肉茅腫が発生しなかには鼻のmalignant granu—loma,眼窩のpseudotumorとよばれる原因不明,分類困難な肉芽腫がある。著者例は65♀,半年来鼻閉塞・急性中耳炎あり。ブドウ菌球検出。6年来上鞏膜炎両側にあり。5年来,左顔面痛を訴える。左眼は昨年剔除。その眼窩に非特異性慢性肉芽腫あり。血圧220/110。Ccr 16ml/min,血沈60mm。眼窩よりジフテロイドおよび嫌気性γレンサ球菌検出。高度の精神障害を呈し死亡。剖検で両半球の鎌および硬膜に灰色の厚い肉芽腫を認める。前頭蓋窩・左中頭蓋窩・海綿静脈洞・視束交叉溝・両視神経孔・下垂体・Gasser神経節・円孔・卵円孔などに同様の肉芽腫あり。眼窩にももちろんある。前頭側頭の動脈周囲には黄緑をおびた物質あり(組織学的にpoly—arteritis nodosa,血管腔は開通),右前頭・右後頭の切断面には皮質に小さい壊死・軟化巣あり。眼窩・頭蓋内の肉芽腫はなかに壊死巣あり,フィブリノイド物質あり,囲んでリンパ球・単球・類上皮細胞・少数の巨細胞存し,血管壁に炎症細胞浸潤,内膜の線維芽細胞性肥厚,内弾性板破裂あり。いくつかの血管閉塞あり。附近の柔膜も同様に浸潤。脳底諸核・淡蒼球・被殻・視床・小脳にはかかる変化なし。腎に動脈硬化性変化,肺に気管支肺炎,心膜・脾にp. n.の変化を見る。眼窩・頭蓋変化は感染性というよりもimmunological disturb—anceと考えられる。つまり原因不明の催因に対する非特異的反応で,多分,アレルギー性変化であろう。p. n.を合併したのはそれに一致する。鼻のmalig. granulomaが組織学的に類似し,やはりアレルギー性で,p. n.やWegener肉芽腫症を合併しうる。鼻のみでなく,副鼻腔・眼窩にもおよびうる。本症例は鼻・副鼻腔に著変なし。しかし本例も鼻に始まり眼窩。頭蓋にひろがつたと考えることができる。本症はWegenerとは異なるが,それにも似ている。本症と同じ症例を文献に探すとHo—pe-Robertson (Trans. ophth. Soc. N. Z. 8: 56, 1956), Walton (J. Clin. Path., 12: 419 1959). Faulds (Lancet,2: 955 1960)の3例あり前二者はWegener合併,後者はp. n.を合併し,本症例はp. n.を合併した。いずれも眼症状の前に副鼻腔症状あり,上気道感染が肉芽腫のpathogenic factorかと思われる。顔面の肉芽腫は本例のように附近へひろがり破壊してゆく不思議な性状をもつ。
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