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小児科入院患者の約1%は脳腫瘍または奇形が占めるが,小児脳腫瘍の1/3は中心管系から発生し,また,全脳腫瘍の20%は小児期に発生する。小児腫瘍の2/3は天幕下(小脳領域)で,著者276例では63%が天幕下,37%が天幕上であつた。11-20歳の期間143例では天幕上と下とほぼ相半ばした。小児では頭痛・嘔吐・欝血乳頭の三徴を呈するのは,すでに大腫瘤で根治はおぼつかない。頭痛,ことに急動に伴うもの,項部強直(むしろZwangshafte Ruhig—stellung,),頭痛時の一過性の舌偏奇顔面麻痺,四肢低緊張,歩行不安定Babinskiなどが腫瘍を疑わしめる。悪心を伴わぬ間発性嘔吐,あるいはNabelkolikのような不定の腹部症状を伴つて長い期間嘔吐が間発するのも本症が疑わしい。この際,血沈促進・白血球増多・腹壁緊張がない。痙攣発作・注意力散漫その他精神能力の減退など。局所症状では大脳半球腫瘍なら半数は痙攣発作(Jackson型でfocalまたは全身性)・言語障害・頭痛・嘔吐・眼底変化など。視束交叉・第3脳室腫瘍なら視力障害視野欠損・前頭痛・内分泌障害(肥満あるいは羸痩)・瞥見麻痺・水道狭窄による水頭症など。小脳半球ではアタキシー・筋トーヌス減弱・歩行偏奇・転びやすい・偏側麻痺・錐体路症状など。小脳虫部では起立歩行の不安定・トーヌス低下・ことに下肢の協同運動障害・錐体路症状・眼震(垂直)。第四脳室では早期に髄液路狭窄が起こり,クリーゼ様頭痛・頭部Zwangshaltung・迷走神経症状・眼震・アタキシー・アスタジー・アバジーなど。276例の部位別は大脳半球75(27%),脳底・間脳・中脳68(25%),小脳・脳幹下部133(48%)であつた。組織学的には小脳astroの名で知られるpol Spongiobl 61例(40例が天幕下)でもつとも多い。良性だが小脳・脳幹の諸中枢へ進入し根治が不能のことが多く,従つて臨床的には悪性の結果をとり,60%が5年生存を得た。medul—lobl.37例。脳室から発生した良性ependym.29例。medulloは悪性で5年以内に90%死亡した。天幕下ependもけつして予後が良くなく,根治が不能のことが多かつた。脳幹・小脳の腫瘍のうち51例は5年以上生存。髄液を誘導する手術がむしろ適切の場合が多い。
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