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I.はじめに
脳疾患の臨床においては脳血行状態の変化はきわめて重要な問題である。というのは,脳挫傷・脳浮腫・脳血管障害などいろいろな原因で発生した脳血行障害は,血流の完全な途絶部位には軟化壊死を,血流減少をみる周囲組織には低酸素症および二次的な脳代謝障害をもたらし,早急に改善しなければ脳細胞の非可逆性機能廃絶を惹起する。これが広範囲におよべば死をもたらし,幸い救命し得たとしてもさまざまな後遺症を残すからである。
脳外科の臨床においては脳外傷にしても,脳手術後の急性期にあつても,脳血行障害→低酸素症に由来すると考えられる,一過性もしくは永続的な意識障害,精神障害,運動知覚障害または脳・神経症状などをみることははなはだ多い。かかる症例に対して,われわれは脳圧亢進の除去と,脳血管拡張剤,昇圧剤を与えて,まず全身血行はもちろんのこと脳血行を改善,正常化して低酸素症を防ぎ,その上で脳細胞の新陳代謝を促進するような脳代謝賦活剤を併用投与して臨床症状の改善を計つてきた。われわれは脳代謝賦活剤として,最近,注目されるようになつた細胞呼吸酵素のひとつであるCytochrome Cを使用する機会があり興味ある知見を得たのでその使用経験を述べ,併せて本剤の適応について言及したいと思う。
We have used Cytochrome C (CYTOCHRON SANKYO) to the series of 21 neurosurgical patients, and the following results were obtained:
1) The clinical effects of Cytochrome C were obtained in 62% (13 out of 21) of all patients, especially prominent in head injuries and in vascular lesions.
2) Moderate improvements were obtained in the cases who had severe motor disturbances of extremities, speech disturbances, or mental disorders.
3) Cyochrome C seemed to be effective when administered to patients who were in conditions of cerebral anoxia or hypoxia.
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