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〔150〕Orbito-ventromedial undercutting後の精神的ならびに身体的変化の推移について
我々は1957年以来,各種精神障害者67例に広瀬のorbito-ventromedial undercuttingを行ない,手術前後の精神的並びに身体症状について詳細に観察を続けているが,今回は大学病院に於ける観察例を中心として,身体症状の推移について報告する。本術式は,従来のblind operationと異なり,開頭により,直視下に前頭葉の撰択された小部分に限局して,皮質下の白質を切截するもので,その精神身体面に現れる症状を観察する事は精神医学的,生理学的に極めて有意義と考える。主なる検査項目は,術中出血量・血液・髓液所見・神経学的所見・眼底所見・自律神経機能・副腎皮質機能,その他に亘るが,その内,興味ある所見としては,血液の濃縮傾向,髓液圧の変化・下肢反射の減弱乃至消失・表在感覚殊に触覚・痛覚・聴覚の鋭敏化,眼底の軽度の滲出性変化等が認められたが,何れも一過性の変化であり,術後約1週間で術前に復している。術中出血量は100cc前後であり,又,術後軽度の発熱と中等度の白血球増多が認められたが4日後には術前に復している。眼底所見として,手術直後に軽微な滲出性の変化が認められたが,従来のstandard lobotomyに比べるとはるかに程度の軽いものであつて,1週間前後で完全に吸収されてしまう。何れにしても,手術侵襲による直接的副作用は極めて軽い。又術後痙攣発作を起したものが3例あつたが,何れも体質的素因や術前に頻回の電撃治療をうけたこと又,術後Phenothiazine系薬物投与等の諸要因が関与しており,手術そのものによる結果とは云い難い。自律神経機能は術後変化を示すが,疾患群とその変化の間には一定の関連はない。17K. S値並びにUropepsin値は,術後かなり長期に亘つて変動を示しており,本手術の奏効機転についての生理学的解明への手がかりの一つとなるのではないかと思われるので,更に長期に亘つての検討が必要と思われる。
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