Japanese
English
特集 低体温法
〔6〕治療的低体温法
THERAPEUTIC HYPOTHRMIA FOR HEAD INJURY
福山 敏彦
1
Toshihiko Fukuyama
1
1東京医科大学外科
1Dept. of Surgery Tokyo Medical College
pp.1103-1104
発行日 1962年12月1日
Published Date 1962/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201380
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
60年の本学会で,実験的脳損傷犬に対する治療的低体温の効果について論じた際central semiovaleにおける同じ大きさの脳損傷においては,初期に行なうほど生存率が良く,かつその損傷を拡大する時はこの原則に従わないこと,いいかえると早期に行なつても死亡することを報告した。しかし頭部外傷の臨症例においては,脳損傷の程度,部位が多様であり,治療的低体温の効果は一律に論じられないことは当然である。ここに示す1列は,一般状態において,確かに低体温の効果を示したが意識回復せず,結局死亡したものであるが,その臨床症状と剖検所見を示す。
症例は,高血圧を有する62才の女性で,受傷後経過観察中,第1表のごとき症状を呈し,広汎な病変を思わせたので,型のごとく観察孔を作り,受傷側に,明らかな硬膜内・外血腫を認めた。受傷後10時間を経ていたが,ただちに低体温麻酔下に開頭,これを除去した。引続き治療的低体温を行ない(第1図),瞳乳不同,筋強直は消失し,血圧,脈搏呼吸ともに安定し,心電図も29℃で一時,期外収縮を認めたが,31℃前後では,むしろST下降の改善をみた(第2図)。しかし脳波はほとんど変化なく,全誘導に徐波を示し,依然意識回復をみなかつた。4病日に肺炎合併,体温の上昇とともに,左側瞳孔拡大し,5日目に死亡した。剖検所見は(第2表)左側にcontra-coup injuryがあり,また脳梁および中脳部出血を認めたが,視床下部延髄に著変はなかつた。以上低体温の応用された症例の剖検所見の累積および治療開始時期の関係は,今後の効果の検討に,なんらかのよりどころを与えるものと思われるので追加する。
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.