書評
—野村隆吉 著—脳血管レントゲン図譜
佐野 圭司
1
1東大清水外科
pp.16
発行日 1962年1月1日
Published Date 1962/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201175
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脳血管撮影は日本のお家芸であるといつてよい。Egas Monizや故斎藤真教授らの手によつて開拓されたこの検査法は清水教授らの経皮的注射法の創始とともに飛躍的に普及した。事実米国は日本から経皮的手段を輸入したといつても過言ではない。ところがわが国で刊行された血管撮影のモノグラフ乃至はアトラスはきわめて少く,わずかに戦前掛川氏,高橋氏の著者があつたにすぎない。今回わが敬愛する野村博士の手によつてこの美麗な図譜が世に出たことは同学のものとして心からよろこばしく存じている次第である。
本書は解説編,図説編,病歴編の3編よりなり著者自身の症例108例についての207枚の血管図の示説を主体としている。解説は簡にして要を得ており,図説編へのpreludeの役を充分に果している。慾を言えば解説にできるだけシェーマを入れてほしかつたと思う。たとえば正常血管像各部の名称などもシェーマにより説明したならば初心者にももつと理解しやすいのではないかと思われる。前大脳動脈の変位の際見られるFrontopolarzeichen, Falxzeichen中大脳動脈の変位時にみとめられるKandelaberzeichen等もシェーマがあれば一目瞭然であろう。ことに最後のものは図説にも実例があげてないので本文のみではあるいは初心者にはのみこみ難いかもしれない。
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