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あとがき
H
pp.143
発行日 1958年2月1日
Published Date 1958/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200649
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書籍の奥付には,何版という版数の表示がある。版数が重つておれば,その本はよく読まれており,また歴史の古い名著だという一応のめやすになるであろうか。従つて,出版社の方では,版数の多いことを以て,その本の声価の高まりを誇示する気持になり,また読者の方は,版数が多ければ安心して買うということになるようである。
だが,このことはあくまでも一応の原則らしいことであつて,よく考えてみると,そこにはいろいろの問題が伏在している。先ず版数の「版」は「組版」を意味するのであるから,同一の紙型で増刷をした場合には版数は同一であつて,正確には何刷というべきである。小説などの文芸本の如きは,句読点一つにいたるまで,みだりに変更することはできないから,その本が大量によく売れることの判定は,むしろ同一版であつて刷数が重ねられることの表示が正しい。第1版第10刷というような本が出てくることになる。
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