--------------------
あとがき
H
pp.769
発行日 1957年11月1日
Published Date 1957/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200625
- 有料閲覧
- 文献概要
印刷所は汚いものというのが,日本では大体常識のようである。埃と機械油とインクにまみれ,そして破損紙の屑という光景が真先に頭に来てしまう。だが,よい仕事をするには,その仕事をする環境が整備され,整然と能率的な仕事が進行出来るような雰囲気がなければならない。印刷とても同様である。汚い印刷工場からは精密な印刷物が出来る訳がない。
その点では,StuttgartのGeorg Thieme Verlagの見せてくれた下請工場Schreiberのよく整備された印刷工場の内部には感心した。先ず印刷工場の内部が,普通の事務所のよにう綺麗である。よく掃除と整理がゆきとどいており,埃や油やインクや,そして紙屑といつた雰囲気などは微塵もないということが一つ。そして次には,中に働いている職工が,いずれもその途で何十年もやつてきたかと思われるような年輩の落着いた熟練工ばかり眼についたことである。勿論若い人達も居ないわけではなかつたが,何よりも仕事に打ち込んでいる年齢というもの,要するに年輪の重味というものがリードしている空気をひしひしと感じさせられた。このような雰囲気から,世界に市場を獲得している精緻なドィッ医書の出版が進められているのだという感慨は蔽い得なかつた。Thiemeの專属.工場ではないから,いわば競争会社であるGustav Fischerの組版も並んでいたが,管理がよくゆきとどいて,どんどん精力的に出版が押し進められている空気がよくうかがわれた。
Copyright © 1957, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.