書評
—石橋俊実編—間脳の機能と臨床
冨永 一
1
1国立東京第一病院神経科
pp.34
発行日 1955年1月1日
Published Date 1955/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200432
- 有料閲覧
- 文献概要
間脳のはたらきが,多くの研究者の注意をひくようになつてからすでに久しい。それにもかゝわらず,明確さと多かれ少なかれ意識性とをもつ脊髄や皮質のそれにくらべて,間脳の病理は,いちぢるしくその解明がおくれ,そのうち視床ことに視床上部については新しい知見もかなりあるが,いまなおよくわかつていない。大体の見当は,Edingerのいわゆる境界溝をさかいとして,それよりも上にあつて胎生学的に皮質のそれに相応してとくに高い分化度をしめす視床とその上部とは知覚,その下にある視床下部は運動,この2つの中間のあたりが内臓の知覚と運動というように,それぞれ生活感覚に関係した機能をもつと,莫然と考えられているにとゞまり,外套におゝわれたその深い位置と,はなはだしく線維の錯綜していることなどが.この追究を阻んでいる。しかし,これにいどむ研究は,近年,ことに米国における精密な電気的刺激,記録装置による美事な神経生理学の收獲をはじめとして,脳電図の応用と発達,白質切離手術の普及,その他一般脳外科学や生化学などの進歩によつて,とくにこの部の線維結合の解明などに新しい展開が期待されるようになつた。
我国では,さきに昭和11年,勝沼,内村両教授の宿題報告により当時までの成果が総括せられたが,戦争を経過して17年目の昨年5月,第50回日本精神神経学会総会のシソポジウムに「間脳の機能と臨床」がふたゝびテーマとしてとりあげられた。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.