「精神医学」への手紙
精神医学は本当に日進月歩?
藤川 徳美
1
1国立療養所賀茂病院
pp.1246-1249
発行日 1999年11月15日
Published Date 1999/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904885
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Neuroscienceの進歩と臨床精神医学の停滞
医学研究は,今までの医学的介入をより良いものにすることを目的とする。つまり,疾病の原因を明らかにする(病因および病態の解明),疾病の予後を予測し予後を向上させる(疾病経過の解明と治療効果の向上)という面で従来の医学的介入をより良いものにすることが目的である。
ほとんどの臨床医は自分の診療行動(診断行動,治療行動)に影響を与えるような学術報告を得ることを目的に,学会に出席したり,最新Journa1の論文を読む。しかし,実際には明日からの診療行動に影響を与えるような学術情報はごく稀にしか見つからず,失望することが多い。近年,臨床における診断・治療の判断場面においては,科学的な根拠(evidence)に基づいた診療を進めるべきであるというEvidence-Based Medicine(EBM)が推奨されている。しかし,現在の状況では,日常の診療行動においてEBMの実践は実際には困難であり,「研修医のA君が受け持ち患者の治療方針に悩み,Internetで論文を調べ,evidenceに基づいた新しい治療方針を見つけだす」という話も現実的とはいえない。
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