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1989年のベルリンの壁崩壊により引き起こされた地球規模の市場化により現代の企業社会は大競争時代を迎え,激しい競争を勝ち抜くために各企業は事業展開の迅速性と効率性を重視するようになってきた。具体的には,経営者の(1)迅速な意志決定と実行,(2)経営資源の選択と集中,(3)在庫期間の可能なかぎりの短縮化,(4)資産回転の向上などが求められている。中でも,技術革新の激しいネット関連業界や半導体関連業界ではさらに早い意志決定と実行が求められており,そのめまぐるしい変化は「ドッグイヤーのごとく」と呼ばれる。ドッグイヤーとは,犬の平均寿命は約10年と人の1/7であるから犬にとっての1年間は人の7年分の出来事が起こることを意味しており,つまり今までの常識の7倍の速度で意志決定と実行を行わないと激しい競争を勝ち抜けないという意味に用いる。
このスピード重視の経営改革は1990年代に入りジャック・ウエルチ会長が率いるGE(ジェネラル・エロクトロニクス)社の経営戦略に取り入れられたのが典型とされ,この考え方は最初にアングロサクソン系の欧米企業に取り入れられ,その結果として競争の勝ち組としての膨大な利益と史上稀にみる高株価をもたらした。その一方,1990年代の日本企業は,バブルの負の遺産の解消というハンディキャップがあるものの,それ以上に経営改革の遅れが目立ち,意志決定の遅れ,デパート型の多角経営による経営資源の拡散などにより時代の流れから取り残され,大手電機,商社などの日本企業は大幅な赤字を垂れ流す結果となった。ここ1〜2年日本企業も遅ればせながら経営改革の必要性に気づき,大幅なリストラ,事業分離取締役会の改革などが行われ始め経営戦略の変化が見られるようになってきた。
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