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睡眠や夢については古来から神秘的な現象として多くの人が関心を持っていたが,睡眠が科学として取り上げられるようになってからまだその歴史は浅い。神経科学は最近著しい進歩を見せ,細胞および分子レベルでその成果を上げているが,現在のところ最も基本的な問題である睡眠の機能や役割についてもいまだ十分に解決されていないのである。一方で睡眠障害とこれによる日中の眠気や覚醒度の低下が社会的問題として取り上げられるようになり,臨床医学としての睡眠研究の重要性がますます大きくなってきた。最近では様々な睡眠障害の病態が少しずつ明らかにされ,新しい治療法が開発され,これに伴って,新しい診断分類が用いられるようになってきた。このように睡眠科学は基礎から臨床,社会生活までかかわる広い領域にわたっている。
このような状況の中で,アメリカでは次々と研究施設や睡眠障害専門外来が設けられ最近では国立睡眠研究所が設立された。次にヨーロッパでもこのような施設が開設されるようになり,睡眠研究と睡眠医学の重要性が社会的にも広く認知されるようになってきた。それは現代社会が睡眠を慢性的に犠牲にするような生活様式になった結果として,健康に対して様々な悪影響が生じたからである。このような状況は近代文明が発展した西欧先進国でみられ,やがて日本をはじめとするアジア諸国にも波及してきた。最近ではアジア地域にも睡眠障害が増加する傾向がみられ,それとともに睡眠についての研究報告が多くみられるようになってきた。1994年にはアジア睡眠学会が結成され,その第1回大会が日本睡眠学会の定期学術集会と合同して,東京で開催された。ここでは最近の我が国の睡眠研究の動向と,これまで2回開催されたアジア睡眠学会に参加した各国からの発表をもとに,アジアの各国の睡眠障害と研究動向を紹介する。
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