Japanese
English
短報
転落事故を契機に生じた全生活史健忘の1例
A Case of Psychogenic Amnesia All Over the Life-History Following a Falling Accident
藤崎 慎一
1
,
朝田 隆
2
,
飯田 栄子
3
,
假屋 哲彦
4
Shinichi FUJISAKI
1
,
Takashi ASADA
2
,
Eiko IIDA
3
,
Tetsuhiko KARIYA
4
1医療法人南山会峡西病院
2国立精神・神経センター武蔵病院
3山梨厚生病院
4山梨医科大学精神科神経科
1Nanzankai Kyousai Hospital
2National Center of Neurology and Psychiatry
3Yamanashi Kousei Hospital
4Department of Neuropsychiatry, Yamanashi Medical College
キーワード:
Amnesia
,
Conflict
,
Rorschach test
Keyword:
Amnesia
,
Conflict
,
Rorschach test
pp.93-95
発行日 1997年1月15日
Published Date 1997/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904259
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
健忘を主症状とする状態の1つに全生活史健忘がある。これは社会的知識など一般的知識は保たれているにもかかわらず,自己の生活史をまったく覚えていない状態をいう。つまり日常生活は普通に行えるが,自分の姓名,生年月日,家族関係を含めた生活史を思い出せない。一般に心因性の健忘として位置づけられるが,数少ないものの頭部外傷やてんかんなど器質因の関与が否定しえない例もある2,4)。発症の直接因は必ずしも特定できないことが多く,むしろ準備因としての慢性の持続葛藤状況の存在が重要とされる。典型的には遁走を呈した後,健忘症状が顕在化するが,比較的類似した臨床経過をとって改善する5)。
我々は頭部打撲を契機に発症し,本症の発現に重要とされる準備因としての葛藤状況の確認が困難であった全生活史健忘の1例を経験したので報告する。
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.