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■はじめに
ここで「臨床精神病理学」という言葉を使うに当たって,一言弁明しておきたい。「精神病理学」は本来すべからく「臨床的である」という主張があることを知った上で,ここであえて「臨床精神病理学」というのは,実践的な臨床家が心得ているべきであり,精神科「臨床」で要求される「精神病理学」のことである。すなわち「実践的な臨床家が」というのは,いわゆる「精神病理学」をみずからの研究領域とし,そこに立脚している,いわば「専門」精神病理学者の議論を取り上げようとしていないということが1点である。第2はその研究所見が医学にとって,ここでは当然精神医学にとって「共有の財産」となりうるような精神病理学を考えている。すなわち,精神科医なら誰にでも理解され,臨床的に経験することの多い問題点を取り扱う。それは症状の評価法,記述方法といったものから,症例の理解,さらには症例の治療といった側面も含まれる精神病理学である。
1994年4月に,有志の集まっている私的な研究会が小さなシンポジウムを持った。その時のテーマは「記述精神病理学vs計量精神病理学」というものであった。このたびの特集はそのシンポジウムを下敷きにしている。特集の主題が「精神病理学の方法論―記述か計量か」というのはその名残と思っていただきたい。そのシンポの時から2年経ち,執筆者諸氏はその間に考えるところがあったと思う。本特集では新たに書き下ろしていただき,張氏とKraus教授に参加していただくことにした。特徴といえば,上述のように「臨床精神病理学」を広くとらえているので,精神病理学領域を専門にしていないが,精神科臨床を深めるために,精神病理学へのいっそうの理解の必要性を感じている人たちが執筆していることである。
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