巻頭言
精神病院と精神医療審査会
小池 清廉
1
1京都府立洛南病院
pp.454-455
発行日 1996年5月15日
Published Date 1996/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904093
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一般科ではかなり以前から,患者のQOLやアメニティの論議がさかんとなった。癌のインフォームド・コンセントは真剣に討議されており,定着し始めている。精神科ではどうであろうか。入院告知についてはすでに法律で義務づけられた。病状や薬物の説明も,かなり行われていると思われる。しかし,精神分裂病の病名告知や薬物の副作用の説明や,審査請求権の説明などはなお不十分であり,討議も不足していると思う。
精神医療のレベルが一般科のそれよりもかなり低いのは,1950年代の医療法施行令・通知がいまなお適用され,医師数,看護基準ともに一般科と格段の差がついたままで精神病院が運営されているからである。特別養護老人ホームと比べると,相当に狭い病棟に,避難所や収容所を思わせる60人もの多人数を入院させている現状が承認されている。これらの事実は,精神医療のレベルが,QOLやアメニティを論じる以前の段階にあることを如実に物語るものといえる。少なくとも私は,患者家族に自信を持って,精神病院への入院をお勧めできる現状にはないと,残念ながら思っている一人である。
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