「精神医学」への手紙
Letter—Evidence-based approachを実践する臨床医に対する疑義/Answer—レターにお答えして—「Evidence-basedを実践する臨床医に対する疑義」は一緒に乗り越えてゆきましょう
古川 壽亮
1
,
今泉 寿明
2
1名古屋市立大学医学部精神科
2可知病院
pp.446-447
発行日 1996年4月15日
Published Date 1996/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904092
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インターネット,ウィンドウズ95,情報革命と浮足立っている世相に鑑み,古川論文2)に描かれている実証的証拠に基づく精神医療の具体例,すなわち「治療上の疑問点をオンライン文献検索によって解決する大学病院の研修医」という夢のようなプレゼンテーションに対してささやかな疑義を示しておきたいと思います。
第1に,インターネットあるいは商用ネット経由で,自腹(民間病院の苦しい台所も含めて)をあまり切らずにデータベースをオンライン検索できるという環境は,臨床研究施設,大学病院,ブランド病院を除けば例外的です。また,Nifty Serve経由の10分間の手際よい検索でMEDLINE使用料は$41.95とのことですが,電話代とNifty Serveの代金を忘れていませんか(細かいことで恐縮ですが塵も積もれば何とやら)。第2に,古川氏の例示された「反復性大うつ病の予防療法として抗うつ剤の維持投与に効果があるかどうか」というテーマは,少数の信頼すべきRCTが同じ結論を示した「プレゼンテーション向け」の都合のよい例題のように思われます。結論が錯綜している複数の論文に臨んで暫定的にしろ1つの方針を決定しようと試みれば,そのテーマに関する展望論文を1編書き上げるに等しい労力が必要ではないでしょうか。例示された研修医のようにたまたま時間が空くことはあるにしても,十分な時間と労力が日常的に確保できるとはとても思えません。
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