動き
「第7回環太平洋精神科医会議」印象記
牛島 定信
1
1東京慈恵会医科大学精神医学
pp.219-220
発行日 1996年2月15日
Published Date 1996/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904053
- 有料閲覧
- 文献概要
環太平洋精神科医会議第7回学術会議は,さる10月24〜27日の間に,西園昌久会長(福岡大学教授)のもと,新しく建設されたばかりのアクロス福岡(福岡市)で開催された。海外14か国から,126名,国内から264名,計390名参会者で,主催者の話では予定より若干少なめであったが,国際学会としてはまずまずの規模となった。ことに秋の学会シーズン真っ只中,筆者自身,東京と各地の学会を往復するなかでの出席であったことを考えると,まずは成功といわねばなるまい。特に福岡市は西の玄関口としての自負があるだけに,さすがに東南アジア諸国からの参加者がいつもより多く,その特色が出ていたように思う。この会議は古い友人たちが3〜4年ごとに集まるわけであるが,そうした仲の良さを漂わす雰囲気は,会議全体を通じての特徴といえた。
まず,会議は会長による基調講演『環太平洋諸国における次世紀に向けての精神医学の挑戦』から始まった。都市化と工業化,人口構成の変化(高齢化),発展途上国における人口爆発,家族および地域概念の変化,職場の経済優先主義の人の心に及ぼす影響,高学歴と資格制度の定着化といった形で急速に進行していく社会変動の様子が概観された後で,傷つきやすいマイノリティーとしての子どもや思春期,婦人,高齢者の問題が論じられた。そして,それに対する精神医学の対応の現状が,脳研究,心理社会的研究,医学教育のあり様が総括されて,本会議で語られるべき概要が述べられた。なかなかとアグレッシブな内容で,会長の意気込みのほどを感じさせるものであった。
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.