巻頭言
ドイツ精神医学の変貌?
猪瀬 正
1
1横浜市立大学
pp.1012-1013
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903740
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私は精神科医を志してから,ドイツ精神医学に強い影響を受けてきた。我が国の多くの大学の精神医学教室の先達は,ドイツの精神医学を範としてきたことは言うまでもないが,フランス精神医学を導入したり,フロイトの精神分析を中心に教えた教室は数えるほどしかないと思う。ところで,私は最近の我が国の事情に詳しくはないのでわからないが,多くの教室での精神医学教育は,昔に比べると,ドイツだけに偏らず,アメリカ,イギリス,ところによってはフランス精神医学の一部を混えているのであろうか。
先に記したような経緯から,私は今日に至るまで,ドイツの専門誌“Der Nervenarzt”を購読しているが,そのことで若干の感想を記そうと思う。実は今年に入ってから,問題の雑誌の表紙の外見が一変したことに驚かされた。その右下側には,毎号かなりの大きさのポートレート(GriesingerやErbなど,ドイツの有名な精神医学者や神経学者のもの)が掲げられてあるし,左側の余白には,その号の目次のタイトルが並べられている。雑誌を開くと,独文の目次が先に,そして次の頁に英文のものがある。各論文の総括の占める面積が以前に比して広くなって,目につきやすくなった。また表や図表に青いインクの活字が用いられていて,一見して,すべてがはでになった。善意に解釈すれば見やすくなったといえるかもしれないが,私からみると,なぜこれほど雑誌の体裁を変えたのかと不思議に思えるのである。
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