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1993年10月1日の老人人口は,1,690万で総人口の13.5%となった。年少人口が毎年減少するのとは対照的に老人人口は増え続け,高齢化社会から超高齢化社会へと進んでいる現在,高齢者への関心は医療従事者よりも一般の人のほうがはるかに高いようである。呆け老人がTVのホームドラマに登場することも珍しくなくなってきた。2025年には,後期老年者(75歳以上)が現在の2.7倍となり,全老人人口の半数以上を占めるようになる。さらに寝たきり老人は230万人,痴呆性老人は314万人と厚生省は推計している。国民の老後の生活に対する意識調査では,長生きへの不安を持つものが多く,全体の8割が不安を感じ,その内容は寝たきりや痴呆になる可能性と,その時の介護問題に関する不安がほとんどを占めている。
現在でも,精神科の老人病棟や老人福祉施設は,平均寿命をはるかに超した老人達であふれている。老人福祉対策が遅れているかの地では,老人ケア110番の看板はあっても,話は聞いてくれるが,即対応はしてもらえない。病者のための老人福祉施設は,申し込んで早くて6カ月,通常は1年待つことになる。老人のデイサービスも市役所に申し込むと「いつになるかわかりませんがそのうち連絡します」と一応に返事されている。施設が空いた時には,すでに本人は死亡していたケースの話も珍しくない,と聞く。痴呆性老人治療専門病棟も常時満床で待ちの状態である。私が大学に引きこもっているせいか,市町村の老人保健福祉計画が見えてこない。それなりに進んでいるとの説明を聞くが,活動のテンポがわかりにくい。国は高齢者保健福祉推進10カ年戦略と言っていたが,時間をかけるわりには肝心なものが見えてこない。国の「21世紀に向けた介護システム試案」もまだ定まっていないようである。政局が不安定なので,親亀の背中に乗った子亀の心境かと察しられる。
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