巻頭言
痴呆診療
黒田 重利
1
1岡山大学医学部神経精神医学教室
pp.674-675
発行日 1994年7月15日
Published Date 1994/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903685
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痴呆をどのように診断していくかと問われれば,誰しもまずその状態が痴呆であるか否かの鑑別を行い,痴呆と診断するとその病因,程度を決めていく。大学病院では診断の手引はよく利用されている,学問交流を行う上で共通の診断基準を持つことは必要不可欠のものであり,我々のところでもDSM-Ⅲ-RやICD-10などを利用している。しかし,精神科医はもともと自由性を愛し枠にはめられることを嫌う。読者がよく感じるようにこれらの基準は詳しく具体的に示されているので,それに従うとかえって診断に困難,窮屈を感じることがまれでない。
教室員からそして病院外の先生から痴呆疑いの患者を紹介される。以前は大学病院のお墨つきを求めるという紹介がかなり多かったが,最近は診断困難例の増加に困惑している。老年期痴呆の2大疾患は脳血管性痴呆とアルツハイマー型老年痴呆であり,両者の臨床的鑑別は昔から言われており,学生時代にも習ったし,今後もその原則は変わらない。学生時代は脳血管性痴呆ではなくて,脳動脈硬化症とか動脈硬化性痴呆という表現であったことも懐かしい。眼の前の患者が脳血管障害の既往がある,言語・歩行障害など神経症状を認める患者では脳血管性痴呆を考えるし,逆にこれらの症状がなくて足元のしっかりした明らかな痴呆を認めるとアルツハイマー型老年痴呆を考えるのはいうまでもない。
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