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シンポジウム 精神障害者の権利と能力—精神医学的倫理のジレンマ
精神障害者の訴訟をする権利と能力—刑事訴訟の場合
Right and Competency of the Mentally Ill to Stand Trial: in case of criminal proceedings
西山 詮
1
Akira NISHIYAMA
1
1東京都精神医学総合研究所社会精神医学研究部門
1Department of Social Psychiatry, Tokyo Institute of Psychiatry
キーワード:
Adversary system
,
Fairness
,
Triability
Keyword:
Adversary system
,
Fairness
,
Triability
pp.875-882
発行日 1993年8月15日
Published Date 1993/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903503
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■はしがき
いわゆる先進諸国の中で日本の刑事裁判所ほど精神障害者の権利(訴訟権)を大幅に認めている国がほかにあるだろうか。一般には精神障害者の権利が認められることは正しいことであるし,日本ではもっとその方向を推進する必要があるであろう。しかし,能力を考慮しない権利拡大のみの主張がどのような事態をもたらすかについては,我が国の裁判所がよくその一端を示しているようにみえる。
USAでは訴訟能力鑑定または訴訟無能力を理由とする精神病院収容の乱用が批判され,これが1970年代以降の広範な脱施設化の運動のもとになった。その後,精神障害者の訴訟権の回復が図られた。しかし,当事者主義の訴訟において,武器(訴訟能力もその一つ)対等の原則は崩せない。したがって,USAでは訴訟能力の鑑定は今日でも頻繁に行われ,これに関する議論も盛んである。我が国は当事者主義を取り入れたが,裁判所はもっぱら一方の当事者たる被告人の責任能力の存否のみを追求し,訴訟能力に対する配慮をほとんど全く欠いている。これが公正な裁判に対する感覚欠如の一証左でなければ幸いである。
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