Japanese
English
研究と報告
多彩な精神症状を呈した広汎性発達障害(残遺状態)の1症例
A Case of Residual State of Pervasive Developmental Disorder with Various Psychotic Symptoms in Adolescence
絵内 利啓
1
,
川端 茂雄
2,3
Toshihiro ENAI
1
,
Shigeo KAWABATA
2,3
1香川大学教育学部
2敬愛クリニック
3南海病院
1Kagawa University School of Education
2Keiai Psychiatric Clinic,
3Nankai Hospital
キーワード:
Pervasive developmental disorder
,
Residual state
,
Infantile autism
,
Psychotic symptom
,
Clomipramine
Keyword:
Pervasive developmental disorder
,
Residual state
,
Infantile autism
,
Psychotic symptom
,
Clomipramine
pp.615-622
発行日 1993年6月15日
Published Date 1993/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903461
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【抄録】 多彩な精神症状を呈して受診した19歳男性が,幼児期に自閉症の診断を受けていたことが判明した。児童相談記録はすでになかったが,母親の陳述や本人の特有な対人態度などから広汎性発達障害,残遺状態と診断した。精神症状の経過は特徴的であり,強迫傾向を基盤にして離人症状,自我変容感,体感幻覚および抑うつが出現し,入院約3週間で強迫傾向を残して,精神症状は消退した。退院約1年7カ月後の現在までの経過から分裂病の合併は否定的であった。精神症状が出現した要因としては(1)知能・言語発達が良好であったこと,(2)遺伝負因の存在,(3)特有な対人態度をとる症例の置かれた環境などが挙げられ,さらに虫垂炎の手術という身体への侵襲が精神病的反応への引き金となったものと考えられた。また精神症状にclomipramineが有効であったことは,本薬剤の5-HT reuptake blockerとしての薬理作用が強迫性障害に有効とされることと関連があると思われた。
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