巻頭言
セロトニンブームの仕掛人はだれか?—向精神薬開発への疑問
山脇 成人
1
1広島大学医学部神経精神医学教室
pp.1266-1267
発行日 1991年12月15日
Published Date 1991/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903155
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セロトニンブームと聞いて,ピンとくる精神科医は読者の中でどのくらいおられるのだろうか。精神医学は裾野が広い学問なので,セロトニンという言葉になじみのない精神科医も少なくないであろう。
1952年にDelayとDenikerがクロールプロマジンの精神分裂病患者に対する臨床効果を報告して以来,薬物療法は精神疾患の治療に大きく貢献してきた。この約40年間に抗精神病薬,抗うつ薬,抗不安薬など数多くの向精神薬が開発され,臨床応用されてきたが,ご年輩の先生方の中には,クロールプロマジンやハロペリドールを越える抗精神病薬も,イミプラミンやアミトリプチリンなどの三環系を越える抗うつ薬も,またジアゼパムを越える抗不安薬もないと断言する人さえいる。事実これらの薬物は現在でも臨床現場で広く用いられており,淘汰される気配は感じられない。これらの向精神薬の薬理作用は近年の精神薬理学の進歩により,分子レベルまでかなり詳細に明らかにされつつある。こうした科学的根拠に基づいて改良,工夫されて開発されたはずの新薬にもかかわらず,古典的な薬剤を大きく上回ることができないのはどうしてであろうか。これまでのモノアミン系やGABA系を中心とした発想で新薬を開発していてよいのだろうかと疑問に思うことがある。
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