Japanese
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研究と報告
森田療法の治療論の再考—ウイニコットの“生き残り”を基点として
Reconsideration on the Therapeutics of Morita's Therapy: From the viewpoint of “Survive” (D.W. Winnicott)
長山 恵一
1,2
Keiichi Nagayama
1,2
1法政大学文学部
2東京慈恵会医科大学精神科
1Department of Literature, Hosei University, Department of Psychiatry
2The Jikei University School of Medicine
キーワード:
Psychotherapy
,
Morita therapy
,
Sei-no-yokubou
,
Object relations theory
,
Survive
Keyword:
Psychotherapy
,
Morita therapy
,
Sei-no-yokubou
,
Object relations theory
,
Survive
pp.949-956
発行日 1990年9月15日
Published Date 1990/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902904
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抄録 ウイニコットの“生き残り”理論を援用すると,森田療法の治癒機転が整合的に理解できるばかりか,曖昧な「生の欲望」理論の中にすぐれて治療力動的な洞察が存在することが分かる。森田療法では,患者の幻想的な言動に振り回されないという“生き残り”の治療的側面を作業が受け持ち,患者への共感・受容という側面を治療集団が受け持つ。これら二つの治療要素は不問技法によって互いに区別されながら,反面では集団を志向した作業を契機に結び付けられており,治療構造全体として“生き残り”が生じる仕組みになっている。森田神経質者の病態—(観念的な)生の欲望—と森田の治療システムは鍵と鍵穴のようにかみ合って,病態破壊のプロセスを引き起こす。破壊されるべき当の病態のエネルギーを利用して,破壊のプロセスを推進するというパラドックスがそこには存在する。「生の欲望」理論の曖昧さは単なる理論的混乱ではなく,治療実践と深くかかわるこうした治療のパラドックスと関係している。
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