Japanese
English
特集 精神疾患の現代的病像をめぐって
分裂病像の時代による変遷
Changing Styles in the Clinical Pictures of Schizophrenia
高橋 俊彦
1
Toshihiko Takahashi
1
1名古屋大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry, Nagoya University School of Medicine
pp.811-819
発行日 1990年8月15日
Published Date 1990/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902887
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
分裂病の場合,その本態についての議論も未だ決着をみておらず,その成因論についても生物学的,心理学的,社会学的,人間学的領域等と広範にわたり論じられているが,いずれの学説も一部の症例には妥当性を持つようにみえても,それが普遍性を持つものとして定説に至ってはいない。こうした状況の中で分裂病像の時代的変遷を検討することはいかなる意味があろうか。第一にはその本態の究明に若干の参考になるかもしれない,ということがある。つまり我々の日常臨床は自分の置かれている状況,時代の制約下にあるので,その意味では視野狭窄に陥っているが,それが若干是正されないか,ということである。第二に,分裂病像を時代や社会文化の違いによって比較することにより,分裂病者と社会との関連が少しは見えて来ないか,ということである。第三に,それを踏まえて分裂病の予防あるいは治療を模索するのに何らかの参考にならないか,ということがある。
しかしBlankenburgら4)も指摘するごとく,時代や地域が異なれば,病像を把握する側の持つカテゴリーも異なるし,カルテの記述の仕方も様々であるので,時代を違えた多数の症例を比較して論ずることは厳密な意味ではほとんど不可能である。したがって本稿では先人達の業績の一部を検討しながら,筆者の考えを若干付け加える程度となる。
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.