巻頭言
“100年後”
川北 幸男
1
1大阪市立大学医学部神経精神医学教室
pp.806-807
発行日 1990年8月15日
Published Date 1990/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902885
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こんなことは滅多にないのだが,今年は大学院の入試に筆答試験をした。定員が1名しか空いていないのに7名が志望するという。基礎に空籍があるので,薦めてみたが誰も「ウン」と言わない。やむを得ず厳正な試験をすることにして,問題の一つに「100年後の精神医学を展望せよ」というのを出した。ほぼすべてが,現役か一浪で医学部に入学し,クラブ活動に精を出しながら留年もせず,国家試験もスイスイとくぐり抜けて,1年間みっちり(?)臨床経験を積んだ優秀な諸君である。どんな答案が出てくるか大変興味があった。
「医学は所詮後追いの学問でしかない。医学がいかに進歩してもその時代の医学を以てしてはどうすることもできない疾病はある。老人の痴呆,AIDSを見ればよく判る。精神分裂病をはじめとする内因性精神病はやはり残るであろう。一方では危険因子の検索が進み,発症の予防が計られる反面,患者のquality of lifeが重視され,そのための施設が整備されて,究極的には精神病院は消滅する」。
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