特集をふりかえって
「医制100年」をよむ
津田 順吉
pp.690
発行日 1974年12月15日
Published Date 1974/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204933
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100年だからどうということではなくとも9月号の本誌医制100年号は有益であったし,私のような老懶には100年という文字を本誌によってはじめて知った.そして「発言あり」に始まって,「対談」「明治初期の人脈」,「医療制度と医療技術」「資料」と判りよく解説的にならべてあったのは,私の斜読みにも有難いものであったが,しかし深い考察があって難解ともいうべきであろう.とは云っても,このように100年間を小冊子にまとめて頂いたことは,いかに有意義であるか,特に川上武氏のものは,1つのテキストブックだと思った.また,曽田長老と橋本氏の対談は,聞き手のおかげで,楽しいお話となり,子母沢寛の小説「落葉」と同じように面白く,相良知安のまわりに,妖しく青い鬼火が燃えるように思われたり,相良知安のような入を狷介不羈というとか,後藤新平にそれを感じさせた石黒忠悳のこと.このような相良知安が日本の最初の医学をドイツにしたのだったことを若い人達は知っておくべきかと思った.
昭和10年頃,東大小児科の裏に相良知安を偲び,入沢達吉博士という人々が,碑を建てられ,その碑を上野の山の方に向けられたなど,相良知安が,大学を上野の山に建てるつもりだったこと,不忍の池に大きい橋をかけることだったなどを思われての心であったと12月の午後六時頃満員の講堂の学生達に課外講義を楽しくやっていられた入沢博士を思い出した.只,どなたも,安田徳太郎氏にふれておられない.
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