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日本睡眠学会第27回定期学術集会は,山本光璋会長(東北大学大学院情報科学研究科教授),松岡洋夫副会長(東北大学大学院医学系研究科教授)のもと,2002年7月4日から5日まで,仙台国際センターで行われた。「睡眠と人間性の回復」という全体テーマが示され,特別講演1,会長講演1,ランチョンセミナー4,シンポジウム3(うち一つは市民公開講座),研究奨励賞受賞講演2,一般講演150のほか,7月3日にプレコングレスシンポジウム2,7月6日にはポストコングレスシンポジウムおよび睡眠科学・医療専門研修セミナーが開かれた。学会認定医・歯科医・検査技師・医療機関の制度がスタートした直後でもあり,熱気にあふれた学会となった。7月5日には仙台エクセルホテル東急で懇親会が催され,学会場から引き続く討論や,親交を深める絶好の機会が提供された。
まず7月3日にプレコングレスシンポジウムが開かれた。I「オレキシン—その基礎と臨床」では,ここ数年で急速にクローズアップされたオレキシンが摂食行動のみでなく,睡眠・覚醒調節にかかわっていることが,分子生物学・生理学・薬理学・臨床医学などさまざまな分野で第一線の研究を行っている研究者の方々の講演で詳細に示された。オレキシンはモデル動物のみならず,ヒトのナルコレプシー発症にもかかわっていること,ナルコレプシーとの相関のあるHLADR2の有無とオレキシンの髄液中濃度が関係しており,今までの蓄積された研究成果とも合致することなど,衝撃的な発表が相次いだ。II「睡眠呼吸障害検査の現状と問題点」では,睡眠呼吸障害を客観的にとらえようとする意欲的な取り組みが次々に提示された。睡眠時呼吸障害は当学会関係者をはじめとする多くの医療関係者の努力により近年社会的認知が浸透し,日々の診療場面で重要性を増してきた疾患であり,まさに時宜を得たテーマと感じられた。特別発言として,立花尚子氏(大阪府立健康科学センター)から米国では睡眠障害の検査・治療が,一定のスタンダードを保証するべくシステマティックに構築されている旨の説明があり,その合理的な取り組みに感銘を受けた。
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