動き
第10回日本睡眠学会印象記
阿住 一雄
1
1東京都神経科学総合研究所
pp.1216
発行日 1985年10月15日
Published Date 1985/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204030
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第10回日本睡眠学会定期学術集会が高橋康郎研究員と筆者を世話人として,さる5月31日と6月1日の2日間,野口英世記念会館(東京)で開催された。この学会は昭和52年5月に発足し満8年を経過したが,現在の正会員数は321名に達し,米国の睡眠研究協会の356名,欧州睡眠研究協会の約370名に略々匹敵する組織となった。参加者は246名であった。
第1日の午前中は12題が発表された。最近,研究がさかんとなった睡眠物質に関するもの3題,脳波分析に関して4題,その他5題である。酵素免疫測定法によってDelta Sleep-Inducing Peptide(DSIP)様物質のラット脳内分布を調べたところ,側坐核,辺縁系,視床下部に高濃度に存在した。また,24時間睡眠によるDSIP様物質の変化はみとめられなかった(永木ら)。抗DSIP血清をラット側脳室に注入し,DSIPを不活性化することによって徐波睡眠(Slow Wave Sleep)が抑制されるかどうかを検討したが,抑制するという結果はえられなかった(中垣ら)。睡眠促進物質の有効成分の一つであるウリジンをラットの腹腔内投与をしたところ逆説睡眠が増加した(本多ら)。睡眠から覚醒への転換が交感神経緊張の増大によって引きおこされるという仮説を証明するために,ネコの電気刺激による覚醒閾値の水準を検討した。交感帯の主要核である視床下部腹内側核は中脳網様体や視床前腹側核よりも,その覚醒への転換機構に対しより重要な役割を果していると示唆された(松本ら)。
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